VWに関わる独の株主訴訟問題、同社は法的根拠がないと司法に回答


独国内法に基づく情報開示義務違反の主張について、VWが答弁書を提出

フォルクスワーゲン AG(本社:ドイツ・ニーダーザクセン州ヴォルフスブルク、以降VW)は、3月4日(独・中央時間)、資本市場の法規制に基づく一部株主からの開示義務違反との主張について、Landgericht Braunschweig(ブラウンシュヴァイク地方裁判所)へ答弁書を提出したと発表した。

VWによると、内外の法律専門家による精査の結果、VW取締役会は、ドイツの法規制に基づく開示義務を適切に果たしたと述べている。

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VWが、この段階で同発表を行った理由は、ディーゼル問題について、報道機関による不完全な文書の公表を是正し、答弁書の一部の抜粋が、報道機関によって公表されることを回避するためと云う。

上記を踏まえVWは、ドイツ国内で行われた株主訴訟には、法的根拠がないと考えており、その理由は、この開示義務の遂行に対して責任を持つ者が、株価に及ぼす経済的な影響を正しく評価できるためとしている。

ディーゼル問題の株価への影響は、2005年9月18日に初めて発生した

VWによると、今回のディーゼル問題に関する株価への影響は、米国の環境保護規制への違反が発表された2005年9月18日に初めて発生したと述べている。

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そしてその時点までは、ディーゼル問題の影響を受ける車の台数(約50万台)は対応可能な範囲のものであったこと。

また罰金額も、米国に於ける過去の類似事例と同様に、数千万から数億ドル(低めの)が科されることが予想されていたため、株価への影響を示すような情報はまったくなかったとしている。

さらに、今回のディーゼル問題は、有効な技術的解決策によって阻止できる問題であると考えていたため、自社株価への影響はほとんどない見立てをしていたと云う。

VWは来る4月後半に調査の暫定的な結果を報告する予定

VWは「違反通知」が発行された後の2015年9月22日に、この問題についての声明を発表した。

またフォルクスワーゲンの監査役会によって委託された、ディーゼル問題に関する事情および、責任の所在についての徹底的な調査は、現在も鋭意継続中としている。

この調査では目下膨大な量のデータを今日も調べており、約5000万冊の書籍に相当する102テラバイトにも及ぶデータを既に確保し、VWは来る4月後半に調査の暫定的な結果を報告する予定としている。

VWによる答弁書において述べられた法的観点の背景

振り返ってみれば、今回のディーゼル問題の原点は、当時ヨーロッパで既に成功していた同技術を用いて、米国に於いて大規模なディーゼル・キャンペーンを開始することを決定。

この目的達成のために、高性能で費用効率に優れた新ディーゼルユニットであるEA189タイプのエンジン開発を推し進めたことにあった。

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一方、米国では環境汚染物質の排出は厳しく規制されており、当時、米国の最も厳しい基準では、窒素酸化物(NOx)の排出量は当時、ヨーロッパで適用されていた「EU5」規格の約6分の1に相当する31mg/kmまでしか許されていなかった。

そこで新しいディーゼルエンジンを設計するにあたり、VWの技術者は、窒素酸化物削減策には他のパラメータ(例えば、CO2)に対する波及効果があるという課題に直面していた。

上層レベルの関与を必要としない限られた予算内で改変を実行

その後、EA189プロジェクトの時間枠および予算内で、上記の相反する目的を解決するために、現時点で判明している限りでは、グループ取締役会より下位レベルのパワートレイン開発部の一部の人々(まだ個人の特定には至っていない)が、エンジン管理ソフトウェアに変更を加えることを決定したとしている。

こうしてソフトウェアに変更を加えることによって、ベンチテストにおいて、実際の走行時とは大きく異なる排出量の値が作出されるようになった。

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またこの変更は、上層レベルの関与を必要とせずに、エンジン管理ソフトウェアの開発に用いることができた予算内で、比較的小規模な改変によって実行することが可能であった。

結果、同社によると合計約15,000個のアルゴリズムのうち、改変されたのは比較的少数だったのだが、カリフォルニア州の環境保護当局であるカリフォルニア州大気資源局(CARB)は、2014年5月に、国際クリーン交通委員会(ICCT)が発表した研究から、不正行為の可能性を知る事となった。

ベンチテストと路上走行との間で窒素酸化物値のずれを発見

この研究によれば、フォルクスワーゲンのディーゼル車2台の窒素酸化物の値が、ベンチテストと路上での走行との間で、正常な状況の下で想定される以上に大きなずれが発見されている。

その後カリフォルニア州大気資源局(CARB)は、フォルクスワーゲン グループ オブ アメリカ(VW GoA)に説明を求め、その後数ヵ月にわたり、社内での検証試験が行われた。

そして2014年12月2日にカリフォルニア州大気資源局(CARB)との会議で、フォルクスワーゲン グループ オブ アメリカ(VW GoA)は、2014年12月に北米市場ですでに計画されていた定期点検作業において、第1世代および第2世代のEA189タイプのディーゼルエンジンユニットのキャリブレーション修正をすることを提案した。

2014年11月迄の段階に於いて上層部が気づいた形跡がない

VWによると、2014年5月23日に国際クリーン交通委員会(ICCT)の研究に関するメモが、当時のフォルクスワーゲンAG取締役会会長マルティン ヴィンターコルン氏のために作成されている。

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しかしこのメモは、同氏宛の週末の大量のメールの中に含まれており、ヴィンターコルン氏が、当時このメモに気付いていたかどうか、気付いていた場合、どの程度までの認識があったかについては、書面による記録が存在しないとしている。

また2014年11月14日にヴィンターコルン氏は別のメモを受け取っている。

こちらの内容は、他の件とともに当時発生していたいくつかの製品不良事例について報告し、北米のディーゼル問題について約2000万ユーロのコストの枠組みについて言及するものだったと云う。

当初、VW経営陣が特段の注意を払う事柄ではなかった

現時点で判っている限りで、ディーゼル問題はVWが直面していた多くの製品問題の1つとして取り扱われており、当初はVWの経営陣が特段の注意を払っていたものではなかった。

当時VWに於いてこの問題を担当していたのは、VWの「製品安全委員会」(APS)であったが、こうしたテストベンチと路上走行との間の排出量のずれは、どの自動車メーカーにおいても発生するもので、必ずしも直ちに規制違反となるものではないと考えており、これに関わるサービスキャンペーンやリコールキャンペーンも珍しいことではないと認識していた。

今から振り返ってみれば、状況はそのようなものではなかったこと自体は遺憾に考えていると同社では述べている。

2015年7月段階でも改変違反の認識は明確ではなかった

その後、カリフォルニア州大気資源局(CARB)によって、さらなる試験が行われ、北米市場における対象エンジンに対する自主的なサービスキャンペーンによる改善では、窒素酸化物の排出を許容可能なレベルまでに削減するには充分ではないことが明らかになった。

そして2015年夏に、VWの「製品安全委員会」(APS)は、APS独自のディーゼル対策本部を設置した。

また、米国の法律事務所カークランド&エリスが、米国の排出法に関連する質問についてフォルクスワーゲンに助言を行うため起用された。

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現時点でわかっている限りでは、2015年7月27日に、損害および製品の問題に関する定例会議の際に、マルティン ヴィンターコルン氏および、ヘルベルト ディース氏が出席する場で、フォルクスワーゲンの従業員がディーゼル問題について協議している。

ただしこの会議でソフトウェアの改変が、米国の環境保護規制に違反していたことをこの時点の出席者が認識していたかどうかについては明確ではない。当時ヴィンターコルン氏は、この問題についての解明を求めていた。

ヴィンターコルン氏が事実の知ったのは2015年9月4日

2015年8月末に、フォルクスワーゲンの技術者が、米国における不正に関わる詳細な説明を、VW法務部の弁護士およびカークランド&エリスの米国弁護士に対して行った。

この説明によって、エンジン管理ソフトウェアの変更が、米国法に基づき禁止されているディフィートデバイスに該当することを取締役会は初めて認識した。

その時点で、カリフォルニア州大気資源局(CARB)および、米環境保護局(EPA)に対して、この情報を率直に伝えることが決定され、その報告が行われたのは、2015年9月3日の米国当局との会議の際であったしている。

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またこの事実をヴィンターコルン氏は、2015年9月4日に知ったとしている。

過去に他の自動車メーカーによる米国の環境保護法に基づくディフィートデバイス違反で、VWのような規模の会社にとっては特に高い金額ではない罰金を支払うことで和解が成立する流れになると想定されており、同件での対象車は約110万台で、罰金は乗用車1台当たり約91米ドル以下に相当していたと述べている。

これらの内外からの助言に鑑み、本件のディーゼル問題は、ソフトウェアの変更について情報開示し、車を法律に適合するよう適切な対策を施すことで同意し、米国における和解の先例に沿った罰金を支払うことにより、米国当局との問題が速やかに解決できるものと考えられていたとしている。

つまり2015年9月初旬の時点に於いて、ディーゼル問題の影響は依然として米国内に限定されていると考えられていた。

しかし2015年9月18日に違反通知の公表がなされ、世間の注目を集める結果となった。

これを受けてVWでは、即座にグループ内部監査からなる対策本部が設置され、事実関係の緊急調査を行う指示を出した。

結果、ディーゼル問題に起因する影響が、世界中に及ぶ具体的なリスク評価には数日掛かり、初期段階に於ける暫定的な事実関係が確認された2015年9月22日時点で、中間発表としての情報を速やかに開示したとしている。

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