金沢工業大学、バイオマス発電によるエネルギーの地産地消を加速

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直流電力網実証実験が第2段階。バイオマスボイラによる電熱連携実現。双方向高速充電器も国内の大学初導入

金沢工業大学 地方創生研究所は3月4日、白山麓キャンパス内に、IT技術を用いて電力を制御する小エリア直流電力網(DCマイクログリッド系)を構築。同拠点でコテージ間をDC(直流)母線で接続し、再生可能エネルギーによる地産地消を目指した社会実装実証実験を進めていると発表した。

熱と電気のエネルギー地産地消シェアモデル。
熱と電気のエネルギー地産地消シェアモデル。

同実証実験は、新たにバイオマスボイラを導入し、地元産の木材チップを使った熱と電気利用の実証実験を可能にしたもの。さらに国内の大学初の双方向高速充電器も設置。EV(電気自動車)を使ったエリア間の仮想配電線実証実験も加速させる。

現在、国連全加盟国は、世界を変えるための17の目標「SDGs」(Sustainable Development Goals)として、再生可能エネルギーの比率拡大に併せ、自然災害に強靭な社会の実現も主要な目標として掲げている。

しかし現代社会では大規模な発電所が広域の電力を集中的にまかなっているのが現状だ。これは世界有数の災害大国である我が国も例外ではなく、災害発生など一箇所の発電所の停止が引き金になって特定の広域エリア全体が停電してしまう脆弱さが既に露呈している。

2019年2月に設置されたバイオマス発電装置。地元産の木材チップを使用
2019年2月に設置されたバイオマス発電装置。地元産の木材チップを使用

熱と電気のエネルギー地産地消シェアモデル

一方、今回同大学が実証実現を展開している「小エリアでの直流電力網」は、再生可能エネルギーの導入拡大が比較的容易であるだけでなく、自然災害時にも自立運転可能、EVを仮想配電網として活用しエリア間で電気を融通しあうことが可能である。従って万が一の停電に強いという特徴がある。

また太陽光発電や風力発電は発電出力が変動するが、バイオマスや地熱、小水力発電などの出力安定型再生可能エネルギーとベストミックスし、蓄電池等を導入して変動を吸収すると共に、自立運転時にも蓄エネ装置として活用できる。

特に白山麓キャンパスを舞台とした太陽光や地元森林資源を活用した再生可能エネルギーによる実証実験は、地域特性を活かした再生可能エネルギーの利用促進モデルとなることからSDGsに貢献する取り組みとして大きな期待が寄せられている。

2019年2月に設置されたバイオマス発電装置。
2019年2月に設置されたバイオマス発電装置。

そんな同研究の社会的意義は以下通りだ。

(1)直流システムにバイオマス発電を連系
交流システムは我が国の電力基盤として幅広く普及しているが、1箇所の事故が直ちに全エリアに波及するという脆弱性を内在している。このため電力系統への波及事故防止のための法的規制があり、これが分散型エネルギーシステムの導入時の課題のひとつといわれている。

一方、直流システムは多種多様な発電電力を統合し蓄電システムと組み合わせることで、電力系統への事故波及を極小化することが出来る。このため、小型分散型再生可能エネルギーの活用に向いている。さらに交流と異なり、電力を安定供給する制御も比較的容易だ。

今回は、既に白山麓キャンパスに設置済みの太陽光発電や蓄電池等に追加して、バイオマス発電(北菱電興株式会社、株式会社イクロス、株式会社成宏電機、みなみ設備工業株式会社)を追加しました。バイオマスボイラの熱を、騒音や振動が少なく理論熱効率が高いと言われているスターリングエンジンで電気に変換する。

この電気により、直流システムに接続し、地産地消に適した需要家本位の自律分散型制御を実証実験を行う。このようなバイオマス由来の発電システムを直流システムに直接接続するケースは世界的にも例がない。

バイオマスボイラの出力は、燃料の投入量で調整が出来るため、エネルギーのベースロードとして運用が可能であり、積雪が多い里山コミュニティーでの主役になると期待されている。

国内の大学ではじめて設置*1された双方向高速充電器。EVを仮想配電線として活用。
国内の大学ではじめて設置*1された双方向高速充電器。EVを仮想配電線として活用。

(2)熱と電気を相互連携しエネルギーシェア
電力事業者の大規模発電は、エネルギーの大半が熱として失われる。一方、バイオマス発電は需要家近傍に設置することから、熱は熱として利用でき、熱と電気の両方で地元産木材チップの保有エネルギーを最小限のロスで活用することが可能となる。

すなわち、熱は熱のままベースロードとなる熱空調(熱暖房等)として利用し、不足する部分や変動する部分を電気空調で補い、さらにその電気もバイオマス発電で供給する。

また、熱と電気エネルギーの両方ともコミュニティー間で共有し無駄なくシェアする。ちなみに従来では、熱、または電気だけの単独のエネルギー融通は多数の事例があった。

しかし今回の実証実験では、熱と電気の両方を相互に連携、すなわち、各需要家での熱と電気の消費状態を見て相互融通し無駄をミニマム化する。これにより、地域におけるエネルギーの最大限活用が可能な、熱と電気のエネルギー地産地消シェアモデルの実現を目指す。

(3)双方向高速充電器を導入しEVを仮想配電線として活用
太陽光発電は設置箇所で日照が違うため発電量が異なる。このため、地方全体でみれば、太陽光発電の電力が過剰で捨てざるを得ないところと、クリーンでない電力で不足分を補う必要のあるところが出てくる。

そこで平野部の扇が丘キャンパスでEVを充電し、山間部の白山麓キャンパスで利用するなどして、EVを動く蓄電池として活用。あたかも、仮想の配電線として電気を輸送する実証実験を行う。

ただし電気の輸送だけのためにEVを移動させるのは現実的ではない。そこで両方のキャンパスで教職員が常時移動し、その移動に合わせて電力を輸送する、ワークプレースチャージングとして実証実験を行う。

また、電力系統停電時にEVを避難所等に移動させて非常用電源として活用することも想定されている。ただこの際、EV自身の移動にも電力を消費する。

このため実質的にどの程度EV電力が使えるのかなどを事前に推定しておく必要があり、このための基礎データ収集も行う。結果的にEVの仮想配電線機能により、地域でのエネルギーレジリエンスにも貢献していくことを目指している。

(4)バイオマス発電は地域の林業活性化にもつながる
森林資源は光合成により、もともと空気中にあった二酸化炭素を取り込んでいる。このため燃焼させて空気中に二酸化炭素を排出しても炭素の総量が増えない「カーボンニュートラル」の優等生である。

さらに、植林することで地域の林業産業活性化にも繋がる。今回、白山麓キャンパスではバイオマスボイラに地元産の木材チップを使用し、地方創生に貢献していく。