トヨタ、中国清華大学と共同のモビリティ研究機関を設立


トヨタ自動車株式会社(本社:愛知県豊田市、代表取締役社長:豊田 章男)と清華大学は4月21日、「清華大学-トヨタ連合研究院」(連合研究院)を設立することで合意し、今後5年間に渡って、共同研究を重ねていくと発表した。(坂上 賢治)

トヨタと清華大学は、共同で中国の発展に寄与し、中国が必要なモビリティカンパニーを数多く排出するためには、環境問題の解決や交通事故の低減につながる優れた新技術を搭載したクルマの開発と普及が最も重要な課題であるとした。そこでこれを踏まえた連合研究院を共に設立する。

実は両者は、1998年から技術講座を開催するなど、次世代車と次世代の交通社会についての共同研究に取り組み、着実に進めてきた。

そして今回設立される連合研究院では、中国の顧客に進んで選ん貰えるクルマを研究していくことだけに限らず、水素の積極的な利活用の方策を探していくなど、中国のエネルギー問題や社会課題の解決に寄与する自動車以外の研究にも積極的に取り組んでいく構えだと云う。

またトヨタは、中国だけでなく世界の発展につながる取り組みの一環として、自社技術のオープンポリシー化を基本としていると予てより話してきた。

そこで電動車普及については、トヨタが自ら保有している特許実施権を広く、無償で提供する国際的な賛助体制を既に決定している。従って今回の清華大学との共同研究に於いても、上記に係る技術供与を含め、中国社会に出来うる限り貢献して行きたいと話している。

この連合研究院の設立について、具体的にトヨタの豊田章男社長は「昨年5月、李克強首相とお話させて頂いたことが全ての始まりで、今回の連合研究院の設立に至りました。中国の発展に関与する機会を頂き、嬉しく思っています」と語った。

またこれに際して企業としてのトヨタは、2018年11月「中国国際輸入博覧会」でe-Paletteを始めとした「電動化、知能化、情報化」を活用し、人々の生活を支える「新たなモビリティ施策」も提案済だ。

もともとは、この「新たなモビリティ」に関するアピールは、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会での同技術の利活用を踏まえて披露したもの。

しかし今後は、北京2022オリンピック・パラリンピック冬季競技大会でもこの東京2020で得た知見を活かし「国際オリンピック委員会」「国際パラリンピック委員会」「北京オリンピック・パラリンピック冬季競技大会組織委員会」等との連携の上、中国大会での成功に関してもトヨタは、同技術を活用して貢献していきたいとも述べている。

ここまでの話から弊誌読者各位に於かれては、先の4月3日、トヨタが名古屋市内での記者会見を皮切りに発表した自社電動技術提供の話は、この中国への技術提供の布石だったのではないかと察して頂けると思う。

既に当編集部では、昨年2018年の9月編集の「雑誌版・NEXT-MOBILITY」にて、トヨタが中国マーケットでライバルメーカーをキャッチアップするため、これまで企業秘密にしてきた虎の子のハイブリッド(HV)技術を中国メーカーに提供する意志と可能性があると記したが、現実にその通りとなってきた。

そもそも現段階での中国EV市場の成長状況は、当初から判っていたことなのだが、例え政府の環境車規制の波が押し寄せたとしても、少なくとも短中期的な純EV普及で1割程度のシェアに留まる。

それはなぜかと言うと、中国があまりに巨大な消費市場ゆえに、エネルギー供給やパワーユニット製造で、幾多の課題が生まれることが必定だからだ。

今後は一定規模までBEV浸透が進んだ後に、中国の自動車戦略は広義のNEV量産へと動いていく。それが新エネ車規制を目前にして、ようやく表層に浮上してきたということなのだろう。

事実、先の上海自動車ショーで独フォルクスワーゲンも、米ゼネラルモーターズも、フォードも、さらに日本の日産・ホンダ・三菱自動車工業も相次いでコンセプトカーとしての電動車を相次いで発表はした。

しかし今年から2020年に掛けて中国政府の生産目標に沿って、当地の生産台数車の3〜4%を純電動車として販売していくとしたら、その規模が極めて大きいゆえに、その前途は厳しいものがある。

しかも2021年以降は、その比率がさらに大きく引き上げられていく流れにある。もしもこの期間で、各メーカーのEV生産量が未達となってしまえば、中国政府へ相応の罰金を支払わなければならないのだ。

2019年に掛けて中国のEV量産は、自動車販売台数が過去半年を超えて減速傾向が続いているなか、メーカー各社にとってコスト負担も大きく、EV大量生産に伴う利益確保は望み薄だ。

しかも中国のマーケット下で、純電動車以外の補助金政策は既に今年で75%が削減される。そして来年には廃止へと向かう予定だ。

今後この中国政策の方針に従っていくならば、例えば当地でこれまで大量の車両を販売してきたゼネラルモーターズの場合、2019〜2020年の期間に於いて、およそ27万台に迫る純電動車を中国マーケットに供給しなければならなくなる。

そのためには、今の世界レベルを大きく凌駕する高性能かつ、低価格なバッテリーの確保が必要だ。もちろんインバーター製造についても技術的な飛躍が欠かせない。

そうしたなかで仮に今後、2030年位までの限られた時期であったとしても、もしもトヨタ製の電動技術が「清華大学-トヨタ連合研究院」で、中国自動車業界のデファクトスタンダードになれるような可能性が見えてくるとしたらどうなるか。

トヨタの戦略次第では、互いに当地で覇権争いを繰り広げることになるライバルの米国車・ドイツ車の成長戦略を打ち砕く可能性すら、見えてくるかも知れないのだ。

日本政府とトヨタ、そして中国政府との接触は、予てより折に触れ取り沙汰されてきたゆえに、この共同研究体制が中国行政のヒントの一端になれることが出来るのであるなら、新たな日・独・米・中の自動車覇権を巡る政治的駆け引きが繰り広げられることになるのかも知れない。

精華(清华)大学