トヨタ・東芝・イワタニ、神奈川で風力による水素製造と利用促進の実証事業を開始

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神奈川県、横浜市、川崎市の3自治体並びにトヨタ自動車株式会社、株式会社東芝、岩谷産業株式会社の民間3社は、横浜市が保有する風力発電施設「ハマウイング」の発電電力を利用し、当地に於いて、純度99.97%以上の水素燃料を製造・貯蔵・圧縮するインフラ環境を整備。

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製造した水素を、圧縮機を持たない簡易水素充填車により輸送し、横浜市内や川崎市内の青果市場や工場・倉庫等に導入する燃料電池フォークリフトで使用するサプライチェーンの構築を目指すと発表した。

このプロジェクトが始まった切っ掛けは、行政の再生可能社会構築の要請を受け、民間3社がこれに応えて、2015年9月8日から検討を開始。

これが京浜臨海部における「再生可能エネルギーを活用した低炭素な水素サプライチェーンモデルの構築」を図る実証プロジェクトへと進展したもの。

昨年2015年9月7日には「委員会」を立ち上げ、太田健一郎横浜国立大学名誉教授と、内山洋司筑波大学名誉教授が学識経験者として参加。本格実証の方向性や、実証後の目指すべき姿について、具体的な内容の検討を進めてきた。

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Quote : Yokohama environment creation station environmental protection unit

この実証プロジェクトの概要は、まず横浜市風力発電所(ハマウィング・定格出力1980kW)敷地内で、風力によって発生させた電力と上水道を利用して東芝が電気分解を促し、CO2フリーの水素を製造。

toyota-toshiba-iwatani-start-a-demonstration-project-of-hydrogen-production-and-promote-the-use-of-wind-in-kanagawa20160315-1これを貯蔵するシステムをトヨタタービンアンドシステムが整備(貯蔵にはプリウスの廃電池を採用した蓄電池システムを設置)する。

さらに製造された水素を、岩谷産業がFC車両ベースの簡易水素充填車(現在は暫定的にハイブリッド車両を使用するが、後にFC化する考え)により輸送。

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横浜市の中央卸売市場(短距離・多頻度使用)、キリンビール横浜工場(重量物運搬)、川崎市のナカムラロジスティクス(建屋3階フロアに於ける水素充填)、ニチレイロジグループ東扇島物流センター(低温倉庫内の利用)の4拠点に、燃料電池フォークリフトを新規導入し活用するという手順だ。

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運搬にあたっては、一般の定置並びに、移動式水素ステーションのように高圧縮により液化した水素を運搬するのではなく、あえて45MPa(メガバスカル)の圧縮に止めた気化状態で運搬。

そのまま35MPaで水素を利用する燃料電池フォークリフトへ充填するというスタイルを取る。

今後のプロジェクト進捗は、本年秋頃から試験的運用開始。まずは燃料電池フォークリフトを2施設で各1台、計2台導入しての水素デリバリーシステムを稼働。

その後、2017年度を目処に本格運用を開始。燃料電池フォークリフトの導入を4施設で各3台ずつの計12台に拡大し、左記予定規模の水素製造、貯蔵・圧縮・運搬・利用の稼働サイクルの完成を目指す予定だ。

なおハマウィングで発電可能な電気エネルギーの総量は、水素製造・貯蔵の実証実験に利用する総量よりはるかに大きなものであるため、今回使われない部分の発電分は、積極的に売電していく構えだ。

以上、いわば再生可能エネルギーの地産地消というべき、こうした地域と一体となった水素サプライチェーンの構築により、これまでの電動フォークリフトや、化石燃料を使用するフォークリフト利用時と比べて、80%以上のCO2削減が可能になると試算している。

併せて同実証を通じて、将来の水素社会展開モデルを見据えた行政の規制緩和方策の是非、販売する水素燃料のコスト試算、現実のCO2削減効果についても丁寧に検証していくと云う。

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水電解装置の水素を造り出す構造図。水素極: 2H+ + 2e- → 2H2、酸素極: H2O → 1/2O2 + 2H++ 2e-

一見すると風力発電の電気から、改めて水を利用して水素を製造。これを液化せず、気化状態で運搬し、燃料電池フォークリフトに利用する形は複雑にも見える。

しかし国外に於けるフォークリフト市場は、既に「電気」を直接利用する車両(1日数時間の使用で充電に要する時間が厭わない業務環境)と、「水素」を利用する車両(使用状況が連続的で充電等の時間が差し挟めない利用環境)に二分化されており、米国・欧州共に、既に燃料電池搭載のフォークリフトが一定以上の位置を占めている。

これら充填に要する時間的成約等の要因を筆頭に、電気を水素として貯蔵利用したいニーズも、そこに存在するという事なのだろう。

またトヨタ自動車にとっては、化石燃料から水素を取り出すより、再生可能エネルギーを原資とする水素生産を行い、規模は大きくなくとも、それをフォークリフトに限らず、車両や装置の動力源として利用する環境構築は、そもそもMIRAIを生みだした自動車メーカーとしてはまさに「夢の実現」でもある。

会見に於いてトヨタ自動車専務役員・友山茂樹氏は、「官民連携で日本が持つ技術を連携させて、最大限の効果を引き出すのが狙い。

世界に対して個々の技術で勝って、ビジネスで負ける事にならないようしたい。

事業最終年度である平成30年度末を目指し、都市型の再生可能エネルギーの地産地消の場にしたい」と語った。

なお同事業は、環境省委託事業「平成27年度 地域連携・低炭素水素技術実証事業」に採択され、実施する事業となる。

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写真は、会見に出席した各自治体並びに事業体の担当者各位。向かって左から「川崎市・総合企画局長・瀧峠雅介氏」、「株式会社東芝・次世代エネルギー事業開発プロジェクトチーム 統括部長・大田裕之氏」、「岩谷産業株式会社・取締役産業ガス・機械事業本部副事業本部長・竹本克哉氏」、トヨタ自動車株式会社・専務役員ヶ友山茂樹氏」、「横浜市・温暖化対策統括本部長・野村宜彦氏」、「神奈川県・エネルギー担当局長・松浦治美氏」の6名

 

実証プロジェクトの概要は以下の通り。

実証テーマ
(1)風力発電(ハマウィング)により水を電気分解して水素を製造するシステム
(2)最適な水素供給を行うための貯蔵と輸送の仕組み
(3)燃料電池フォークリフトの導入利用
(4)水素サプライチェーンの事業可能性調査

サプライチェーンシステムイメージ図toyota-toshiba-iwatani-start-a-demonstration-project-of-hydrogen-production-and-promote-the-use-of-wind-in-kanagawa20160315-11

各実証テーマにおけるシステム及びポイント
(1)風力発電により水を電気分解して水素を製造するシステム
水素製造
ハマウィングの電力を、水の電気分解による水素製造及び装置の動力としても活用。変動する風力発電量と水素需要の時間差を考慮し、設備を最適運転できるマネジメントシステムによりフレキシブルにCO2フリー水素を製造する。

水電解装置(株式会社東芝)toyota-toshiba-iwatani-start-a-demonstration-project-of-hydrogen-production-and-promote-the-use-of-wind-in-kanagawa20160315-17

ハマウィング敷地内計画イメージ(パース)

(2)最適な水素供給を行うための貯蔵・圧縮と輸送の仕組み
水素貯蔵・圧縮
水素を安定供給するために、2日分の水素を貯蔵。ハイブリッド自動車の使用済バッテリーを再利用し、環境性に配慮した蓄電池システムを活用する。2日間の蓄電量確保でハマウィングが止まっていても安定的な水素供給が可能とする。

蓄電池システム(株式会社トヨタタービンアンドシステム)toyota-toshiba-iwatani-start-a-demonstration-project-of-hydrogen-production-and-promote-the-use-of-wind-in-kanagawa20160315-16

水素輸送
燃料電池フォークリフト用の簡易水素充填車を、日本初導入。
フォークリフトの水素使用量を常時把握し、最適輸送でユーザー要望にきめ細かく対応していく。

簡易水素充填車(岩谷産業株式会社)toyota-toshiba-iwatani-start-a-demonstration-project-of-hydrogen-production-and-promote-the-use-of-wind-in-kanagawa20160315-13

(3)燃料電池フォークリフトの導入利用
水素利用
導入先は、異なる使用条件で多様な実証が出来る4か所(12台)を選定。2016年2月に実用化モデルとして発表された燃料電池フォークリフトを使用しユーザー利用時のCO2排出量ゼロを実現する。

燃料電池フォークリフト(株式会社豊田自動織機)toyota-toshiba-iwatani-start-a-demonstration-project-of-hydrogen-production-and-promote-the-use-of-wind-in-kanagawa20160315-14

燃料電池フォークリフトの導入先と実証の狙い
– 横浜市 中央卸売市場本場(青果部) 短距離・多頻度使用
– キリンビール(株)横浜工場 重量物運搬
– 川崎市 ナカムラロジスティクス(かわさきファズ物流センター内) 屋内多層階での使用及び水素充填
– ニチレイロジグループ 東扇島物流センター 低温物流業での使用

燃料電池フォークリフトの導入先・水素運搬ルートtoyota-toshiba-iwatani-start-a-demonstration-project-of-hydrogen-production-and-promote-the-use-of-wind-in-kanagawa20160315-15

(4)水素サプライチェーンの事業可能性調査
水素価格
現状(本実証におけるコスト)の評価から、量産体制の整備、必要な規制緩和項目等の洗い出しなど、今後の水素価格低下に向けた対応の方向性について検討する。また将来(2030年頃)を見据え、技術革新や、サプライチェーンの大規模化による普及/横展開モデルについて検討。
CO2削減効果
CO2フリー水素のサプライチェーン構築により、従来比80%以上のCO2削減効果との試算し、更なるCO2削減に向けた取組の方向性の検討する。

今後の実証スケジュール
◎2016年秋頃から試験的運用開始
燃料電池フォークリフト導入(2施設各1台 計2台)
簡易水素充填車による水素デリバリーシステムの稼働
◎2017年度から本格運用開始
燃料電池フォークリフトの導入拡大(4施設各3台 計12台)
水素製造、貯蔵・圧縮等の全てのシステムが稼働

今後の実証スケジュールtoyota-toshiba-iwatani-start-a-demonstration-project-of-hydrogen-production-and-promote-the-use-of-wind-in-kanagawa20160315-12

以上