トヨタ他8者、自然エネルギー利用の燃料電池車を使う実証事業を本格実践へ

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神奈川県・横浜市・川崎市・岩谷産業株式会社・株式会社東芝・トヨタ自動車株式会社・株式会社豊田自動織機・株式会社トヨタタービンアンドシステム・日本環境技研株式会社の9者は、環境省委託事業である「平成27年度 地域連携・低炭素水素技術実証事業」に採択された燃料電池フォークリフトを利活用した実ビジネスへの具体的運用を開始した。

これにあたって7月12日、横浜みなとみらいを基点に「平成27年度 地域連携・低炭素水素技術実証事業」の報道記者向け公開が行われ、風力発電拠点を筆頭に、水素の貯蔵・供給拠点の開所式、さらに燃料電池フォークリフトの利用拠点に於ける状況紹介など、複数拠点を巡回しての披露会が実施された。

なおプロジェクトが、今日の実施に至った経緯は、今から約2年前の2015年(平成27年)9月に、神奈川県の京浜臨海部を対象地域として、「低炭素水素を活用する実証プロジェクト」の内容検討・事業可能性の調査に着手したことに起因するもの。

上記の2015年の可能性調査を踏まえ、まず翌2016年に横浜市が保有する風力発電施設「横浜市風力発電所・ハマウイング」の発電電力を利用するべく当地に於いて、純度99.97%以上の水素燃料を製造・貯蔵・圧縮するインフラ環境を整備した。

次に、ここで製造された水素を、圧縮機を持たない簡易水素充填車により輸送する環境構築に動いた。

同日の披露会にあたっては、トヨタの燃料電池バス等を利用して各拠点を巡回した。

そしてこれを構築した上で、横浜市内や川崎市内の青果市場や、工場・倉庫等に導入した燃料電池フォークリフトで使用するサプライチェーンの構築を目指すとし、同年3月15日に神奈川県・横浜市・川崎市の3自治体、並びにトヨタ自動車・東芝・岩谷産業の民間3社での発表が行われた。

ハマウィング敷地内計画イメージ(日本環境技研)

これがさらに翌2017年7月21日となった本日、上記サプライチェーンモデルの構築に必要とする全設備がようやく完成。いよいよ本格運用の開始発表に至ったもの。

この実証プロジェクトでは、製造・貯蔵した水素を「横浜市中央卸売市場本場(青果部)」「キリンビール(株)横浜工場」「ナカムラロジスティクス(かわさきファズ物流センター内)」「ニチレイロジグループ東扇島物流センター」に於ける燃料電池フォークリフトで使用する。

さらに今後は、プロジェクトが本格稼働となったことから、従来の電動フォークリフトやガソリンフォークリフト利用時と比べて、80%以上のCO2削減が可能になると試算している通りの「コスト試算」・「CO2削減効果」が実現できるのかを検証していくとしている。

ハマウィングの電力を利用した低炭素水素の製造・貯蔵・供給拠点では、山本公一環境大臣などを招いて施設の開所式が行われた。

【実証プロジェクトの概要は以下の通り】

実証テーマ
– 風力発電(ハマウィング)により水を電気分解して水素を製造するシステムを一般的なものとする。

プリウスの使用済みバッテリを利用した水素製造安定化システム。

– 最適な水素供給を行うための貯蔵と輸送の仕組みを、将来の普及展開モデルを見据えたものとする。
(1)燃料電池フォークリフトの導入利用。
(2)水素サプライチェーンの事業可能性を調査。
(3)同プロジェクトによるサプライチェーンの構築。

水素の供給・充填の補給ルート

【実証プロジェクトによる具体的な検証内容】
– 将来の他地域展開を見据え、コスト試算と地球温暖化対策への貢献など水素サプライチェーンの事業可能性を検証。

【水素価格】
– 現状(本実証におけるコスト)の評価から、量産効果の検証、必要な規制緩和項目等の洗い出しなど、今後の水素価格低下に向けた対応の方向性について検討する。
– 将来(2030年頃)を見据え、技術革新やサプライチェーンの大規模化による普及/横展開モデルについても検討する。

燃料電池フォークリフトを利用する個々拠点の車両の水素残量などは、ハマウイングの貯蔵施設に於いてリアルタイムで確認できる。

【CO2削減効果】
– 低炭素水素のサプライチェーン構築により、従来比80%以上のCO2削減効果との試算。
– 更なるCO2削減に向けた取組の方向性の検討。
– 今後の本格運用の概要(2017年7月~)。
– ハマウィングの電力を利用した低炭素水素の製造を開始。

燃料電池フォークリフトへの水素充填作業の様子

燃料電池フォークリフト(豊田自動織機)

燃料電池フォークリフト12台、簡易型水素充填車2台を用いた水素供給を検証
– クラウドを利用し、水素の製造から利用まで管理・運用

【今後の実証スケジュール】
– 本格運用に先駆けたトライアル(2016年11月~2017年7月)の実施結果

トライアルの目的
– 水素供給・充填作業の習熟。
– 水素・燃料電池に関する教育。
– 燃料電池フォークリフトの先行導入。

概要
– 横浜市中央卸売市場及びナカムラロジスティクスにて各1台ずつ、試験運用実施。
– 岩谷瓦斯(株)千葉工場から簡易水素充填車により水素を配送。

トライアルを通じた評価
– 電動フォークリフトに比べ、燃料電池フォークリフトは充填時間が短く、また、使い勝手においても特に問題はなく、概ね高い評価。
– 燃料電池フォークリフトの稼働率を高めるために、水素配送回数の増加要望あり。

披露会に関わる概要は以上の通り。

燃料電池車を取り巻く昨今に動きから、実用化の可能性を紐解く

ちなみに燃料電池を搭載したモビリティを取り巻く、その他の実用化・車両運用に関わる動きでは、昨年2016年8月4日、日産自動車株式会社(本社:神奈川県横浜市西区、社長:カルロス ゴーン)が、バイオエタノールから発電した電気で走行する燃料電池自動車のプロトタイプをブラジルで発表している。

この日産の新技術「e-Bio Fuel-Cell」に於いては、サトウキビやコーンなど、植物由来のエタノールを使う事で大気中のCO2の増加をゼロに近づけることが出来る「カーボン・ニュートラル・サイクル」が実現することを強みに、酸素との反応を利用して高効率に発電する固体酸化物型燃料電池(SOFC)を発電装置とするシステムである。

今月には、アンモニア燃料電池の世界最大規模の発電に成功

一方、国立大学法人 京都大学・株式会社ノリタケカンパニーリミテド・株式会社IHI・株式会社日本触媒・株式会社豊田自動織機・三井化学株式会社・株式会社トクヤマの7者は、共同研究を介してアンモニア燃料電池の世界最大規模の発電に成功している。

このアンモニアのエネルギーキャリア、及び燃料としての利用技術については、先の7月9日にチェコ共和国プラハで開催された「第7回世界水素技術大会」で発表されたもの。

実はアンモニア(NH3)は、それ自身が水素を多く含んでおり、かねてよりエネルギーキャリアとして注目されてきた経緯がある。

しかしこれまではアンモニア燃料を用いた場合、燃料電池スタック(電力発生ユニット)そのものの耐久性並びに、有害物質や温暖化ガスの発生。

さらにアンモニアそのものの抽出自体に、高圧を要する大規模装置が必要とされてきた等の課題があり、これまでは理論上の優位性が永らく謳われてきたものの、実用化に至ることはなかった。

しかし今回、京都大学 大学院工学研究科 物質エネルギー化学専攻の江口浩一教授が、ノリタケのセラミックフィルターなどの参画会社等の技術協力を得て、アンモニアを燃料として直接SOFCスタックへ供給、1kWの発電に成功した。

このエネルギー効率は、汎用SOFCと同程度の発電出力であること。有害物質や温暖化ガスの発生を伴わない発電が実用規模まで拡大できる可能性が示されたことで、俄然注目を集めている。

永らく課題であった低コストによるアンモニア抽出も実現可能に

また、味の素株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長 西井 孝明)、及びユニバーサル マテリアルズ インキュベーター株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役 月丘 誠一、以下「UMI」)が管理運営を行うUMI1号投資事業有限責任組合、東京工業大学(以下「東工大」)の元素戦略研究センター長の細野秀雄教授らが、科学技術振興機構(以下「JST」)の支援の下、新たな触媒を用いた世界で初めてとなるオンサイト型のアンモニア合成システムの実用化に成功している。

これまではアンモニア製造は、100年以上前に発明されたハーバー・ボッシュ法(以下「HB法」)を用いて主に生産されてきた。

HB法は空気中の窒素と、天然ガス等から得られる水素のみでアンモニアを合成することができる生産技術で、世界中で広く活用されている。

しかしHB法は、高温かつ高圧の反応条件が必要であり、高いエネルギー負荷がかかる大型プラントでの一極集中・大量生産を行わなければならず、設備投資が高額になるという課題があった。

加えて、アンモニアを生産拠点から世界各地に点在する需要地に輸送するためには、専用の運搬装置と保管設備が必要であることから物流コストが非常に大きいことも課題となっていた。

この課題を解決するため、細野教授らは、低温・低圧条件下で高効率のアンモニア合成が可能な、新たな触媒を発見・発明。

低温・低圧の反応条件であることから、従来難しいとされた小型のプラントでの生産の目処を付けた。

将来、この技術の実用化により、世界で初めてとなる必要な量のアンモニアを必要とされる場所で生産する「オンサイトアンモニア生産(アンモニア製造の地産地消)」モデルの実現が見えてきている。

また併せて細野教授らは、同手法を用いたアンモニア製造を目指す新会社「つばめBHB株式会社」(以下「つばめBHB」)を設立し、今年2017年4月25日に事業を開始している。

純水素を充填・格納のために必要とされる一般的な高気圧対応の水素タンク

このアンモニアを用いた燃料電池システムの利点は、純水素の充填・保管に関わる高圧タンクの製造や保守管理に比べ、既存のプロパンスガスに近い充填・保管に関わる難易度しか要しないことにある。

従って一般市場に於ける利活用という面では、「扱い易い」という利点・優位点がある。

今後、アンモニア燃料を用いた実証機の研究・開発はさらに進められる予定で、将来的にアンモニア燃料電池は、一般住宅の電源としての利用の他、業務用の発電への展開などで期待を集めている。

次世代エネルギー源を利用する車両の選択肢では、まだもう少しの猶予が必要

対して現在のところ、生産した電気をそのまま充填し、車両に用いる電気自動車(EV)は、再生可能エネルギーを基とするエネルギーを利用できているならば、移動車両の運用上、高いエネルギー効率と環境性能が達成される。

しかし既に実用化されている日産リーフ等で見られるように、搭載電池の航続距離が大きく伸び難いこと。

現行の電池ユニットの技術的課題により、一定期間使用した後の電池の蓄電性能の劣化などにより、中古車の日産リーフの販売価格が値崩れを起こすなど、一般の自動車流通市場で一部問題化している。

EVでのこうした課題は、かねてより分かっていたことであり、フランスの株式会社ルノー(Renault S.A.S.、本社:フランス・オー=ド=セーヌ・ブローニュ、取締役兼CEO:カルロス・ゴーン、以下、ルノー)では、欧州に於けるゾーイの消費市場提供にあたり、搭載バッテリを、別額でレンタルできる設定が用意されている。

つまりこの場合、車両自体の販売価格に搭載電池の価格は含まれず、バッテリーリース会社(ルノーの会社)から月額49ユーロから(毎月のパフォーマンスとリース期間による)のコストでバッテリレンタル料の支払いがついて回る格好となっている。

なお車両販売価格には、自宅に設置する充電ボックスの提供と設置が含まれており、現状の電池技術が大きく進展されない限り、EV提供にあたっては、こうした「搭載バッテリはリース」という形も、車両販売に於ける搭載電池の問題を解決できる一手段となるだろう。

なお「ゾーイ」は、現行リーフよりも全長が361mm短く、全高が40mm低いなど、設計時期が異なるため各部寸法や車格が若干異なるが、大枠では設計上における基本構想的には「欧州版リーフ」と呼んでも良いクルマである。

実際にはゾーイは、パワートレインをリーフから進化させている上、車輌自体も軽量されていることなどから、当初型のリーフよりもさらに使用電量の消費効率を高めたモデルとなっている。

いずれにしても次世代車両について、現状のハイブリッド車から、次はエネルギーを直接モーター駆動に代えていく「電気自動車」、または何らかの形で水素をエネルギー源に搭載モーターを駆動していく「燃料電池車」などが見えてきている。

今後EVと燃料電池車の主導権争いについては、いずれかの一方が生き残るということではなく、消費者側は、利用環境下によっての「選択」が求められる訳だが、水素をエネルギー源とするモビリティに関しては、決着に至る道程で、まだあと少しの猶予が必要とされそうだ。

 

 

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